僕の実家は自営業でした。そうすると、食卓ではいつも商売の話が出てくるし、お金の話が出てきます。僕が部活を頑張っていても、「そんなことよりバイトしろ」という雰囲気で、僕はそれを普通だと思って育ってきました。

だから僕は、働くことは尊いことであり、自らの商売でお金を稼ぐことは、ご飯を食べたり、風呂に入ったりするのと同じくらい当たり前のことだと思っています。
ですから、前職を辞めてスポーツ関連事業で生きていこうと思ったときも、たとえば社内ベンチャーとか、あるいは大手スポーツメーカーへの転職といった選択肢はありませんでした。父や叔父たちがそうしていたように、自分も自営業としてスタートするんだと素直に思えました。
起業家をめざして起業家セミナーに通っているような人たちには、正直「やめときな」とアドバイスします。
たとえば、二〇歳を過ぎてプロ野球選手をめざす人はいませんよね? 僕は起業とか経営って、それと同じくらいの「特殊技能」だと思います。僕だって両親がサラリーマンだったら、いまのような仕事観や価値観は持ちえなかったと思います。親が自営業だったことは、かなり僕に影響を与えています。
もし、起業家を「目的」とするなら、ほぼ間違いなく失敗するでしょう。起業とは目的ではなく、やりたいことを実現するための「手段」です。どうしても実現したい夢があるから、仕方なく起業するくらいでないと、途中で挫折してしまうと思います。
僕の感覚でいえば、起業家は「世捨て人」です。僕自身、給料も社会的地位も高い商社を辞めて、わざわざ小さな有限会社を起ち上げたわけですから、完全に捨てているわけです(笑)。もちろん、それで得られる喜びも大きいのですが、一度世の中を捨てられるくらいの決意があってこそ、初めて起業は成功するのだと思います。




